IPOと事業計画・予算
上場会社の将来の業績に関する情報は投資情報として極めて有用であるため、次年度の予算の策定などを通じた新たな業績予想値の算出は、インサイダー取引規制上の「重要事実」として扱われます。この情報を社内に留めておくことは、インサイダー取引規制違反を招くリスクを大きくするため、上場会社は、事業年度の決算発表に際して、次年度の業績(売上高、営業利益、経常利益及び当期純利益)の予想値を開示するのが一般的です。
このように業績予想値を公表した後に、予想値を算出し直したり決算数値を取りまとめた結果、公表済みの値との間に一定割合以上の変動が生じた場合には、直ちにその内容を開示することが義務付けられています。
業績予想は、合理的に仮定された条件に基づいて算出されたものであり、その達成を約束する趣旨のもの(経営者によるコミットメント)ではないという位置づけです。
審査の視点
整備のポイント
一般に予算とは、ある年度の業績の予想値を意味します。上場審査においてはこれを月次に展開し、月次決算の結果と対比することによって達成状況の管理を行うことが求められます。予算と言うと、国や地方自治体のような支出統制のための管理手法をイメージする方もいるかもしれませんが、IPOに当たっては、年度の業績見込みを明らかにすることに寄与することが最も重要とされています。
上場会社は、取引所から業績予想の公表を要請されます。そして、期中において業績予想に変動が生じた場合には、適時に開示することが必要とされています。公表された業績予想値は株価に影響を及ぼすため、その合理性は上場審査における重要な検討項目となっています。
また、過去において、上場したばかりにもかかわらず業績予想を引き下げる会社があったため、上場年度における業績予想の確からしさは、
予算の確からしさは、事業の性質によって大きく変動します。成熟した産業に属している会社で、継続取引が多い会社の場合は、比較的容易に精度の高い予算を組むことができるでしょう。これに対して、スタートアップに近い企業の場合は、精度の高い予算を組むのは通常困難です。このため、上場審査においては、一律に一定の精度を求められるものではありません。
事業によっては、申請期における予算の達成状況を見極めるために、期末前後の上場時期を設定されるケースも見受けられます。
事業計画とは、